新リース会計基準によるオペレーティング・リース取引の資産計上と相続税評価への影響
2025年11月1日
【№1】はじめに
こんにちは!
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本日は、「新リース会計基準によるオペレーティング・リース取引の資産計上と相続税評価への影響」についてお伝えさせていただきます!
2025年4月から段階的に適用が始まった「新リース会計基準」では、オペレーティング・リースも使用権資産(リース資産)とリース負債として貸借対照表に計上することになりました。
これにより、財務諸表上は資産と負債の両方が増える形となりますが、では「相続税評価」や「株式評価」への影響はどうなるのでしょうか?
特に非上場会社オーナーにとっては、純資産価額方式による株式評価や株式保有特定会社の判定に関係する可能性があり、相続・事業承継対策を考えるうえで非常に重要なテーマです。
本稿では、新基準による会計上の取扱いの変化を整理しつつ、法人税・相続税・会計のそれぞれの立場から丁寧に解説いたします。
【№2】結論
結論からお伝えします。
新リース会計基準によって、オペレーティング・リース取引を会計上は資産・負債として計上することになりますが、相続税評価や株式評価の考え方は従来どおり変わりません。
つまり、
オペレーティング・リースの使用権資産は、相続税上の「資産」には含めない
リース負債も、相続税上の「負債」として控除対象にしない
という従来の取扱いを継続します。
その理由は以下の3点にあります。
① 相続税法や財産評価基本通達には、リース資産に関する明文規定がない。
② 過去の裁決でも、オペレーティング・リース契約は「賃貸借契約」とされ、リース物件は相続財産に含まれないと判断されている。
③ 新会計基準はあくまで財務報告目的であり、税法や相続税評価の算定根拠とは直接関係しない。
したがって、新基準適用後も、オペレーティング・リース取引が非上場株式の純資産価額方式の評価に影響を及ぼすことは基本的にありません。
また、株式保有特定会社や土地保有特定会社の判定でも、リース資産・負債を含める必要はないと整理されています。
【№3】やさしい解説
まず、リース取引には大きく分けて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類があります。
ファイナンス・リース:実質的に「購入」と同じ性質。契約終了後は所有権移転または再リースが前提。
オペレーティング・リース:単なる「貸し借り」であり、所有権は借手に移らない。
これまでの会計では、オペレーティング・リースは賃貸借処理とされ、貸借対照表には計上しませんでした。
しかし新基準では、借手(リースを利用する企業)が「使用権資産」と「リース負債」を認識します。
つまり、形式的には**“借りているだけ”でも会計上は資産計上**となります。
では、この会計上の変更が、税務や相続税評価に影響するのでしょうか?
★法人税法上の考え方
法人税法では従来どおり、オペレーティング・リースは「賃貸借取引」として処理されます(法法53①)。
したがって、税務上の資産・負債には影響しません。
★相続税法上の考え方
相続税に関しては、リース資産に関する明確な規定が存在しません。
そのため、評価の判断は「リース契約の実態」に基づきます。
過去の裁決(平成20年4月22日 関裁(諸)平19-39)でも、リース物件は賃貸借契約に基づく賃借物件であり、相続財産に該当しないとされました。
★実務上の整理
純資産価額方式による非上場株式評価では、会社が所有する資産・負債の合計額を基に株価を算出します。
しかし、オペレーティング・リース取引は、会計基準が変わっても実質的な経済価値の移転がないため、評価対象には含めません。
このように、会計上の「見え方」が変わっても、相続税の「評価対象」は変わらないというのがポイントです。
静岡・浜松地域の非上場企業オーナーの皆さまも、会計基準変更で慌てて資産評価を見直す必要はありません。
【№4】具体例
ここでは、オペレーティング・リース取引が実際にどのように扱われるかを、10のケースで具体的に見てみましょう。
① 医療法人が医療機器をオペレーティング・リースで導入した場合
→ 使用権資産を会計上計上しても、相続税上の資産評価には含めない。
② 建設会社がリースクレーンを借り入れている場合
→ 会計上は資産だが、純資産価額評価では無視してよい。
③ 自動車販売会社が展示用車両をリースしている場合
→ リース契約のままでは相続財産に該当しない。
④ 製造業が機械設備をリースで使用している場合
→ ファイナンス・リースでなければ、株式評価に影響なし。
⑤ 不動産管理会社が社用車をオペレーティング・リースで使用している場合
→ 使用権資産は見かけ上増加するが、実質資産ではない。
⑥ IT企業がサーバー設備をリースしている場合
→ リース負債を含めないため、評価額の変動は生じない。
⑦ 小売業がPOS端末をリース導入している場合
→ 会計上は資産だが、実質的所有権がないため評価除外。
⑧ 飲食業が店舗内装をリース契約で借りている場合
→ 契約終了後に返却するため、相続財産に含まれない。
⑨ 運送業が大型トラックをリースしている場合
→ 会計上オンバランスでも、相続税評価に含めない。
⑩ 学校法人や社会福祉法人が複合機をリースしている場合
→ 公益法人でも考え方は同じで、相続税の評価には影響しない。
★重要
リース契約の性質が変わらない限り、相続税評価の方法は変わりません。
新リース会計基準の導入は、あくまで会計上の透明性確保のための制度変更であり、税務評価や資産承継の枠組みには影響しないのです。
【№5】手順(実務対応の流れ)
新リース会計基準の導入により、会計上はオペレーティング・リースを「使用権資産」「リース負債」として計上します。
しかし、相続税評価においては会計上の処理変更にそのまま従う必要はありません。
ここでは、実務上どのような手順で判断・対応すべきかを整理します。
① 現行リース契約の洗い出し
まず、会社が締結しているすべてのリース契約を一覧化します。
内容に「所有権移転」「再リース」等の条項がある場合は、ファイナンス・リースの可能性があります。
単なる賃貸借契約であれば、オペレーティング・リースとして整理します。
② 会計上の分類を確認
新リース会計基準に基づき、リース契約ごとに資産計上が必要か確認します。
資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社等は新基準の対象となりますが、
中小企業(非大会社)は適用を任意とすることが可能です。
③ 税務上の取扱いを確認
法人税法上は、引き続きオペレーティング・リースを賃貸借取引として処理します。
したがって、税務申告上の損金算入額や固定資産計上には変化がありません。
④ 相続税評価の対象外であることを確認
相続税・贈与税の財産評価において、リース資産は通常の資産に該当しません。
財産評価基本通達にもリース資産に関する明確な規定がないため、
過去の裁決事例を参考に「非評価対象」とするのが原則です。
⑤ 純資産価額方式の評価に反映しない
株式評価の際は、貸借対照表の資産・負債をもとに純資産を算出します。
オペレーティング・リースに関しては、会計上の数字が載っていても、
評価算定時には除外して計算します。
⑥ 株式保有特定会社・土地保有特定会社の判定にも反映しない
相続税評価におけるこれらの会社判定においても、
リース資産・負債は対象外とします。
そのため、実質的な会社構成の判定結果が変わることはありません。
⑦ 会計方針と税務方針を社内で文書化
新会計基準導入時には、会計処理・税務処理・評価方法を明文化し、
社内で統一しておくことが重要です。
税理士や顧問会計士と連携し、年次報告書などにも整合性を持たせましょう。
⑧ 相続・事業承継計画への反映
特に後継者への株式移転を予定している場合、
リース資産を実質資産と誤認しないよう注意が必要です。
銀行・税務署・後継者との認識がずれると、評価や交渉に影響を及ぼします。
★注意
財産評価基本通達では、**「実質所有権を持たない資産」**は評価対象外です。
この基本原則に従えば、リース資産は今後も評価の対象にはならないと考えられます。
【№6】FAQ(よくある質問)
Q1. オペレーティング・リースを会計上資産計上した場合、相続税評価も自動的に変わりますか?
→ いいえ。会計上の処理変更は財務報告目的であり、相続税評価には影響しません。
Q2. ファイナンス・リースとの違いは?
→ ファイナンス・リースは実質的に「購入扱い」であり、資産・負債として扱われます。
オペレーティング・リースは単なる「賃貸借」です。
Q3. リース資産を貸借対照表に載せた場合、評価額を増やさなければならない?
→ いいえ。評価上は従来どおり「除外」で構いません。
Q4. 税務上の減価償却はどうなりますか?
→ オペレーティング・リースでは借手側は償却しません。支払リース料を経費処理します。
Q5. 株式保有特定会社の判定基準に影響しますか?
→ いいえ。リース資産・負債は判定に含めません。
Q6. 相続時点でリース契約中の場合はどう扱いますか?
→ 契約中でも所有権はリース会社側にあるため、借手側では評価不要です。
Q7. リース資産を担保に入れている場合は?
→ 実質的な所有権がない限り、担保価値としても相続資産には含めません。
Q8. 会計上の「使用権資産」とは何ですか?
→ 借手が特定の資産を一定期間使用できる権利を資産として表すものです。実質的所有とは異なります。
Q9. 静岡・浜松の中小企業では対応が必要ですか?
→ 原則として現行の相続・株価評価に変更は不要ですが、会計処理と税務処理を明確に分けておくことが大切です。
Q10. 今後、税制改正で取り扱いが変わる可能性はありますか?
→ 現時点では明確な改正予定はありませんが、国際会計基準(IFRS)への整合性から議論が続く可能性があります。
【№7】まとめ
ここまでの要点を整理します。
新リース会計基準により、会計上はオペレーティング・リースも「使用権資産」「リース負債」として計上する。
しかし、相続税法や財産評価基本通達にリース資産に関する規定はない。
よって、相続税評価・非上場株式の純資産価額評価・株式保有特定会社判定には影響しない。
裁決事例(平成20年4月22日関裁(諸)平19-39)でも、リース物件は賃貸借契約に該当し相続財産に含まれないと判断。
新会計基準は財務報告上の透明性確保を目的とした制度であり、税務評価とは別の概念である。
★重要
静岡・浜松地域の中小企業オーナーにおいても、
今回の会計基準変更によって資産税上の影響が生じることはありません。
ただし、決算書上の見かけ上の総資産額が増えるため、金融機関との交渉や税務署の印象に影響する場合はあります。
そのため、リース資産の実質内容について説明できるようにしておくことが重要です。
今後も、会計と税務のルールが一致しないケースは増えていくと予想されます。
リース、収益認識、減価償却など、制度改正が進むなかで、
「どの基準をどの場面で使うか」を明確に区別する姿勢が求められます。
【№8】出典
出典:『税務通信』第3861号(2025年07月28日)「オペレーティング・リース取引の資産計上に伴う相続税評価の影響は?」(税務研究会)
参考:国税庁タックスアンサー「No.4602 相続税の課税価格の計算」(参照日:2025-07-28)
参考:e-Gov法令検索「相続税法・相続税法施行令」(参照日:2025-07-28)
参考:e-Gov法令検索「法人税法・法人税法施行令・財産評価基本通達185~189」(参照日:2025-07-28)
【№9】該当条文の説明
相続税において、リース取引に関する明文規定は存在しません。
そのため、関連する法令を横断的に確認しておくことが重要です。
① 相続税法第22条(課税価格の計算)
相続税法第22条は、「相続または遺贈により取得した財産の価額は、相続開始時における時価による」と規定しています。
つまり、相続税評価は「実質的に所有している財産」のみを対象とする原則です。
オペレーティング・リースのように、所有権が借手に移転していない資産は、この「時価による評価」の対象外と解されます。
② 財産評価基本通達185(純資産価額方式の基本)
非上場株式の評価に用いられる純資産価額方式では、会社の資産・負債を基準に評価を行います。
ただし、ここでいう「資産」は会社が所有するものに限られるため、リース資産は含まれません。
新リース会計基準による会計上の資産認識は、財産評価の概念とは一致しません。
③ 法人税法第53条(賃貸借取引の意義)
法人税法では、オペレーティング・リースを「賃貸借取引」と明示しており、資産の売買として扱いません。
この定義により、借手は資産を所有したとはみなされず、賃借料を損金として処理します。
したがって、相続税評価においても、同様に資産として扱わないことが論理的に整合します。
④ 過去の裁決事例(平成20年4月22日 関裁(諸)平19−39)
この裁決では、リース契約が賃貸借契約に該当することから、リース物件は相続財産に含まれないと判断されました。
実務上もこの考え方が一貫しており、会計基準が変わっても裁決の方向性が覆ることはないと考えられます。
⑤ 実務上の位置づけ
以上を総合すると、新リース会計基準の導入により、会計上は使用権資産とリース負債を計上するものの、
税法および相続税評価の根拠条文では「実質的な所有権」を有する資産のみが対象とされています。
したがって、オペレーティング・リース取引は、相続税評価・純資産価額算定・株式保有特定会社判定のいずれにも影響しません。
【№10】おわりに
最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、
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