火災で自宅が全焼した場合の相続税と小規模宅地の特例
2025年11月5日
【№1】はじめに
こんにちは!
静岡市、浜松市から全国へ向けて「IT×税務会計×補助金=経営革新」を発信して、「日本一わかりやすい税理士事務所」を目指す最高のIT税理士法人です!
私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「火災で自宅が全焼した場合の相続税と小規模宅地の特例」をお伝えさせていただきます!
相続税の計算において、「火災によって自宅が全焼してしまった場合」は非常に特殊な取り扱いとなります。
災害によって家屋が消失した場合、居住継続要件をどのように判断するか、また、火災保険金の扱い、家屋の評価額、相続税申告書への反映方法など、多くの論点が生じます。
特に静岡・浜松地域のように、地震や台風、火災リスクが高いエリアでは、災害時の税務判断は経営者・不動産オーナーにとって極めて重要です。
万一の災害発生後に「居住継続要件が満たせない」と誤って判断し、小規模宅地等の特例を適用しないまま申告してしまうと、結果的に相続税が数百万円単位で増えるリスクがあります。
今回のテーマでは、
火災により自宅が全焼した場合でも「居住継続要件」を満たすケース
火災保険金の相続税・所得税の扱い
災害による家屋評価額(ゼロ評価)と実務上の注意点
を中心に、実例を交えてわかりやすく整理していきます。
【№2】結論
火災によって自宅が全焼した場合でも、
「再建築のための準備を進めている」ことが確認できれば、
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)における居住継続要件を満たすと判断されます。
これは、租税特別措置法通達69の4-17の注書きにより、
「災害によって事業または居住が一時的に中断している場合であっても、再開のための準備を進めているときは居住継続とみなす」
と定められていることに基づきます。
また、火災保険金の扱いについては次のとおりです。
① 相続税の課税対象外
火災保険金の請求権は「火災が鎮火して被害が確定した時点」で発生するため、
被相続人が死亡時点でその権利がまだ発生していなければ、
相続財産には含まれません。
② 所得税でも非課税
相続人が受け取った火災保険金は、所得税法第9条第1項第17号により非課税とされます。
したがって、保険金に対する所得税もかかりません。
③ 家屋評価は原則ゼロ
全焼して延焼中または住めない状態である場合、
相続税法第22条および財産評価基本通達の「現況主義」に基づき、
時価をゼロ評価とするのが妥当です。
補償金がある場合は、それを控除して土地部分を評価します。
★重要:
再建の意思と準備を示す行動(例:再建資金の見積、設計依頼、請負契約、再建スケジュールの策定など)が確認できれば、
「居住継続要件を満たす」と判断される可能性が高くなります。
一方、再建の意思が曖昧で、長期にわたり更地のまま放置している場合には、
特例適用が否認されるリスクがあるため注意が必要です。
【№3】やさしい解説
火災や地震などの災害で自宅が全焼した場合、相続税の申告で問題となるのが「小規模宅地等の特例」の適用可否です。
本特例は、相続人が被相続人と同居していた住宅の敷地を相続した場合、その土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
しかし、家が全焼して居住実態がなくなった場合、「居住継続要件」を満たさないのではないかという疑問が生じます。
ここで参考になるのが、租税特別措置法通達69の4-17です。
この通達には、「災害などにより居住が一時的に中断した場合でも、再建の準備をしていれば居住を継続しているものとみなす」と明記されています。
つまり、家が焼失しても、建て直す意思と行動がある場合は、特例の対象になるのです。
この「再建の準備」とは、建築請負契約を締結していなくても構いません。
金融機関への相談や資金計画の作成、設計業者への依頼、建築予定地の整地など、再建を目的とした具体的行動が確認できれば十分です。
また、火災保険金の扱いについても注意が必要です。
火災保険金は「火災の被害が確定した時点」で発生する権利であるため、火災が鎮火する前に被相続人が亡くなっていれば、その請求権はまだ発生していません。
したがって、相続財産には含まれず、所得税法9条1項17号により非課税所得として扱われます。
さらに、全焼した家屋の評価額は「ゼロ評価」が原則です。
相続税法22条および財産評価基本通達により、評価は「現況主義」に基づいて行うため、現に存在しない家屋には価値がないと判断されます。
火災保険によって補填された部分は、相続人の所得ではなく「損害の補填」として扱われるため、課税対象外となります。
静岡市や浜松市のように災害リスクの高い地域では、災害後に速やかに「再建の意思」を示すことが非常に重要です。
再建に向けた準備の証拠を残すことで、後日税務署への説明が容易になります。
特に、写真・契約書・見積書・金融機関とのやり取り記録などを保管しておくと、居住継続要件の証明として有効です。
★注意
火災から数年経過しても再建が進まない場合は、税務上「居住継続の意思なし」と判断されるおそれがあります。
再建計画が遅れている場合でも、その理由(資材高騰、設計変更、許可待ちなど)を明確に説明できるようにしておくことが肝心です。
【№4】具体例
① 例1:火災発生直後に再建計画を進めたケース
火災発生後、相続人が建築会社に設計を依頼し、金融機関と融資相談を開始していた場合。
→ 居住継続要件を満たすと認められ、小規模宅地の特例が適用可能。
② 例2:再建資金の確保のみを行っていたケース
火災保険金を受け取り、再建資金として別口座に保管していた。まだ契約はない。
→ 準備行為が確認できれば、要件を満たす可能性が高い。
③ 例3:火災後に更地のまま放置したケース
相続後3年間再建の動きがなかった。
→ 居住継続の意思が認められず、特例適用不可。
④ 例4:被相続人の死亡前に火災発生、鎮火後に死亡したケース
火災保険金請求権が確定しており、死亡時点で発生済み。
→ 保険金請求権は相続財産に含まれる。
⑤ 例5:火災中に死亡したケース
死亡時点で火災は鎮火していない。
→ 保険金請求権は未発生のため、相続財産に含まれない。
⑥ 例6:火災保険金で新居を購入したケース
保険金で別の場所に住宅を購入し、そこに居住。
→ 再建と同等の意思があると認められ、特例適用可。
⑦ 例7:火災後に相続人が海外赴任となったケース
一時的な転居であり、帰国後に再建予定がある場合。
→ 準備継続とみなされ、要件を満たす。
⑧ 例8:家屋は全焼したが土地を第三者に賃貸したケース
再建の意思がなく、他者に貸している。
→ 居住継続要件を満たさず、特例適用不可。
⑨ 例9:保険金が支給されず再建困難なケース
災害減免法により評価額が下がり、補填なしでも再建意思あり。
→ 準備行為(設計・見積等)が確認できれば特例適用可。
⑩ 例10:家屋全焼後に同居親族が仮住まいで生活しているケース
一時的な仮住まいで再建を待つ状況。
→ 居住継続要件を満たすと認められる。
【№5】手順(実務対応)
ここでは、火災により自宅が全焼した場合に、
小規模宅地等の特例を適用するための「実務的な流れ」を整理します。
実際に静岡・浜松エリアで相続手続きを行う際にも、そのままチェックリストとして使える内容です。
① 火災発生後の初動対応(被害証明の取得)
まず、消防署または市区町村から「罹災証明書」を取得します。
これは居住継続要件を証明するための基本資料です。
同時に、保険会社への事故報告・保険金請求準備も進めましょう。
② 相続人・財産の確認
火災直後であっても、相続人の確定と財産目録の作成は早めに行うことが重要です。
火災による家屋の焼失後でも、土地や保険金請求権などは相続対象に含まれます。
③ 火災保険金の発生時点を確認
保険金請求権が「いつ発生したか」で課税区分が変わります。
鎮火後に発生した場合は、被相続人死亡時点でまだ権利が確定していないため、
相続財産ではなく相続人の非課税所得になります。
④ 家屋の評価額を決定(現況主義)
相続時点で全焼・延焼中の場合は、家屋評価を「ゼロ」とします。
土地については、火災の影響が残っている場合でも、基本的に通常の路線価等で評価します。
ただし、がれき撤去や再建不能の状況があれば、減価補正を検討します。
⑤ 小規模宅地等の特例の可否判断
再建に向けた準備行為(資金計画、設計相談、見積取得など)がある場合、
居住継続要件を満たすと判断できます。
逆に、売却・貸付・放置のいずれかに該当する場合は要件を満たしません。
⑥ 再建計画の証拠を残す
税務署に説明できるよう、次の資料を保管します。
建築会社との打合せ記録
金融機関への融資相談記録
設計・見積書、請負契約書
再建スケジュール、資金繰表
これらを時系列で保存することで、再建意思の立証が容易になります。
⑦ 相続税申告書の作成
火災保険金の扱い、家屋ゼロ評価、特例適用の有無を整理し、
相続税申告書の添付資料として、罹災証明書や再建計画書を提出します。
⑧ 税務調査対策
火災・災害関連の相続案件は、税務署が「形式的な居住実態」を疑うことがあります。
再建の意思が途切れていないことを説明できるよう、証拠書類を整備しておきましょう。
⑨ 補助金・減免制度の活用
災害減免法や自治体の再建補助金を利用できる場合があります。
これらの補助金は相続税には影響しませんが、
所得税での非課税扱いの確認を忘れないようにしましょう。
⑩ 相続完了後のフォローアップ
再建完了後、税務署に特例適用報告を行うとトラブルを防げます。
再建までに時間がかかった場合も、経過を文書で説明できるようにしておくと安心です。
【№6】FAQ(よくある質問10問)
Q1.火災で全焼した場合でも、小規模宅地の特例は受けられますか?
A.はい。再建の意思と準備があれば、居住継続要件を満たすと認められます。
Q2.保険金の請求権が相続財産になるのはどんな場合ですか?
A.火災が鎮火して、損害が確定した後に死亡した場合です。
Q3.火災で亡くなった場合、保険金は相続税の対象になりますか?
A.いいえ。火災保険金は相続税ではなく、所得税法上の非課税所得に該当します。
Q4.家屋が延焼中だった場合、評価額はいくらになりますか?
A.現況主義により時価ゼロ評価が基本です。
Q5.再建の準備とは具体的に何を指しますか?
A.資金計画、設計依頼、見積取得、金融相談、請負契約など、再建に向けた実務行動全般です。
Q6.保険金を使って別の土地に家を建てた場合も特例対象ですか?
A.はい。自宅再建と同等の居住継続意思が認められれば適用されます。
Q7.再建までに3年以上かかると特例が使えませんか?
A.原則として意思と準備が継続していれば問題ありませんが、放置期間が長いと否認リスクが上がります。
Q8.静岡や浜松のような災害多発地域で注意すべき点は?
A.再建準備の記録(罹災証明、資金計画、見積書など)を必ず保存し、税務署への説明を備えることです。
Q9.火災で失った家の登記や評価証明はどのように取得しますか?
A.市町村の固定資産税課で「滅失登記」や「罹災証明書」を交付してもらいます。
Q10.再建費用が不足して再建を断念した場合、どのように扱われますか?
A.居住継続意思を失ったと判断され、特例適用は不可となります。
【№7】まとめ
火災などの災害で自宅が全焼した場合でも、再建の意思と準備が確認できれば、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用することが可能です。
これは、租税特別措置法通達69の4-17の注書きにより、「災害によって居住が中断した場合でも、再建準備をしていれば居住継続とみなす」とされているためです。
一方で、再建の意思が曖昧なまま長期間更地で放置している場合や、土地を第三者に貸してしまった場合は、居住継続要件を満たさず、特例適用が否認されるおそれがあります。
したがって、再建に向けた行動を客観的に示す資料(設計書、融資相談記録、請負契約書、見積書、建築予定表など)を残しておくことが重要です。
また、火災保険金の課税関係も整理しておく必要があります。
火災保険金の請求権は、火災が鎮火して被害が確定した時点で発生するため、被相続人が鎮火前に亡くなっている場合には、相続財産に含まれません。
さらに、相続人が受け取る保険金は所得税法9条1項17号により非課税扱いです。
家屋評価額については、全焼や延焼中の場合には「現況主義」に基づきゼロ評価とするのが原則です。
補填金がある場合は、それを控除して土地評価額を計算します。
この考え方を誤ると、相続税額が過大となるリスクがあります。
静岡・浜松のように自然災害リスクが高い地域では、災害後の税務処理はスピードと正確性の両方が求められます。
「再建の意思を明確に示す」「資料を保存しておく」「火災保険金の発生時点を整理する」
この3点を押さえておくことで、税務署からの指摘や特例否認を防ぐことができます。
【№8】出典
出典:『税務通信』第3862号(2025年08月04日)「タックスフントウ 第155回 火災により自宅が全焼した場合の相続税」
参考:国税庁タックスアンサー「No.4155 小規模宅地等の特例」 (参照日:2025-08-10)
参考:e-Gov法令検索「租税特別措置法 第69条の4、第69条の4-17(通達)」 (参照日:2025-08-10)
参考:e-Gov法令検索「所得税法 第9条第1項第17号」 (参照日:2025-08-10)
参考:e-Gov法令検索「相続税法 第22条」 (参照日:2025-08-10)
【№9】該当条文の説明
(1)租税特別措置法第69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
居住用宅地等を相続した場合、その評価額の80%を減額できる特例を規定。
特に③項では「災害その他の事由により一時的に居住できない場合」にも適用が認められることを明示しています。
(2)租税特別措置法通達69の4-17(災害による中断の場合の取扱い)
「災害により居住が中断した場合でも、再建のための準備を進めている場合は、居住継続があるものとする」との明確な通達。
この注書きにより、特定居住用宅地にも準用されます。
(3)所得税法第9条第1項第17号
「損害保険契約等に基づき支払われる保険金は非課税所得とする」との規定。
火災保険金を相続人が受け取る場合にも、この非課税規定が適用されます。
(4)相続税法第22条
相続財産の評価は「相続開始時における時価」に基づくと規定。
全焼や延焼中で市場価値を有しない家屋は、時価ゼロとして扱われることが妥当とされます。
(5)災害減免法第6条
災害で損害を受けた財産のうち、保険等で補填されなかった部分の減免措置を規定。
家屋評価ゼロの場合にも、残余損失がある場合は控除対象となる場合があります。
【№10】おわりに
最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、
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