産科医療特別給付事業に係る給付金の所得税法上の取扱い

2025年10月18日

【№1 はじめに】

こんにちは!
静岡市、浜松市から全国へ向けて「IT×税務会計×補助金=経営革新」を発信して、「日本一わかりやすい税理士事務所」を目指す最高のIT税理士法人です!
私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「産科医療特別給付事業に係る給付金の所得税法上の取扱い」をお伝えさせていただきます!
このテーマは、医療・福祉関係の法人だけでなく、個人事業主・職員の方にも関係のある内容です。
「給付金や補償金は非課税と聞いたけれど、実際どんな基準で判断されるの?」
「過去の補償対象外の方も、今回の制度で対象になるの?」
こうした疑問に、最新の国税庁文書回答をもとに、やさしく整理してまいります。

【№2 結論】

結論として、「産科医療特別給付事業」に基づき支払われる給付金は、所得税法上の非課税所得として取り扱われます。
これは国税庁が正式に文書回答を公表し、法令・通達に基づいて非課税であることを明確に示したものです。
この非課税の判断は、次の3つの法的根拠に裏づけられています。

① 所得税法第9条第1項第18号
…心身に受けた損害に基因して支払われる損害保険金や損害賠償金は、所得税の対象外と定めています。

② 所得税法施行令第30条
…「身体に傷害を受けた本人」だけでなく、その配偶者・直系血族・生計を一にする親族が受け取る場合も非課税となると明示しています。

③ 所得税基本通達9-20
…「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に該当する限り、損害保険金・給付金などと同様に非課税とする趣旨を示しています。

これらを踏まえ、今回の産科医療特別給付事業における給付金は、
・損害保険契約に基づく保険金と同様の性格を持つ
・重複支払いがなく、損害額を補填するものである
・身体の傷害を受けた本人またはその親族が受け取る給付である
これらの条件をすべて満たすため、「非課税所得」に該当することが確定的といえます。
★重要
受給者が児本人でなくとも、配偶者や両親など親族であれば非課税。
給付金に対して確定申告や住民税の申告は不要。
医療費控除額の算定にも影響しません。
このように、税務上も行政上も「救済金としての位置づけ」が保たれており、安心して受給できる制度といえます。

【№3 やさしい解説】

この制度を理解するために、背景を順を追って見てみましょう。
① 産科医療補償制度とは?
平成21年に創設された制度で、出産時の医療事故によって脳性麻痺になった児に対し、補償金を支払う仕組みです。
目的は、安心して出産できる医療環境の確保と、産科医療体制の安定です。
この補償金は、すでに国税庁の文書回答で「非課税所得」とされてきました。
② 特別給付事業の誕生
令和4年1月の基準見直しで、「過去に対象外となっていた児」も新たに給付対象とされました。
この見直しを受けて令和7年1月から「産科医療特別給付事業」がスタートしました。
対象者は、平成21年1月~令和3年末までの出生児のうち、改定後の基準に該当するケース。
③ 対象となる受給者
出生児本人が亡くなっている場合でも、その配偶者、直系血族、生計を一にする親族などが受給可能です。
これは「身体の傷害を受けた者の親族も非課税対象」とする通達(所得税基本通達9-20)に基づきます。
④ 非課税となる理由
原資は、損害保険会社が返還した保険料をもとにしています。
保険金や損害賠償金と重複支払いは行われず、損害の範囲内で支給されます。
よって、「身体の傷害に基因して支払われるもの」と同じ性格を持つため、非課税となります。
⑤ 実務上の留意点
この給付金を受け取っても確定申告で申告不要です。
医療費控除にも影響はありません(損害補填金ではないため)。
給付を受ける際に所得税や住民税が課されることはありません。
★注意
ただし、制度の性質上、他の手当(例:見舞金、補償金)と混在して受け取る場合は、
それぞれの性格を確認する必要があります。課税・非課税の判定は「支払目的」によります。

【№4 具体例】

ここでは、実際のケースをもとに、課税・非課税の判断や申告の有無をわかりやすく説明します。

① ケース1:出産時の医療事故で脳性麻痺となった児の補償金

従来の「産科医療補償制度」に基づく補償金です。

所得税法第9条第1項第18号に該当し、非課税所得として扱われます。

② ケース2:過去に補償対象外だったが、改定後に対象となった児

「産科医療特別給付事業」により支給される給付金。

原資が返還保険料であり、損害保険契約に類するもの。

よって、非課税所得となります。

③ ケース3:児がすでに死亡しており、配偶者や親が受給する場合

所得税基本通達9-20により、「身体に傷害を受けた者の親族」が受け取る給付金も非課税。

したがって、受給者の課税所得には含まれません。

④ ケース4:同時に見舞金を受け取った場合

見舞金の性質が「社会通念上相当」と判断される範囲なら非課税。

しかし、雇用関係や業務上の補填金として支払われるときは課税対象になる可能性があります。

⑤ ケース5:医療機関が代わりに受け取る場合

病院等が患者に代わって給付を受けるケースでは、預り金として処理し、収益には計上しません。

⑥ ケース6:給付金の支給が遅れた場合の利息

本給付金自体は非課税ですが、遅延利息が支給される場合、その利息部分は課税対象になることがあります。

⑦ ケース7:二重補償に該当する場合

他の損害賠償金と重複する部分は支給されません。

したがって、非課税の範囲で給付金が調整されます。

⑧ ケース8:他の補償制度(例:交通事故の自賠責)との関係

性質が重複しないため、併給されても課税には影響しません。

⑨ ケース9:確定申告書に誤って記載してしまった場合

給付金を課税所得に入れて申告した場合は、更正の請求により非課税扱いに訂正可能です。

⑩ ケース10:給付金を地方自治体が受け取る場合

自治体が補償の一環として受け取る給付金は、公的性格が強いため非課税扱いです。

★重要ポイントまとめ

産科医療特別給付事業の給付金は非課税所得。

受給者が本人でなくても、身体の傷害に基因していれば非課税。

医療機関経由の支払いも「預り金処理」。

遅延利息・業務補填金は課税対象になる可能性あり。

誤申告は更正の請求で修正可能。

【№5 手順】

給付金を受け取った場合の実務的な流れを説明します。

① 給付金通知の確認

給付金を受け取る前に、支給機関(産科医療補償制度運営組織)から届く「給付決定通知書」を確認します。

支給目的欄に「産科医療特別給付事業による給付金」と記載があることが非課税の根拠となります。

② 確定申告での取り扱い

原則、申告不要です。

給付金を所得に含める必要はなく、確定申告書への記載も不要です。

③ 会計処理(法人の場合)

法人が代理で受領する場合は、預り金(負債)として計上し、収益計上は行いません。

④ 医療機関での事務手続き

病院が手続きを代行する場合、本人確認と委任状の保管が必要です。

税務署から照会があった場合は、通知書の写しを提示します。

⑤ 更正の請求

すでに課税所得に計上して申告済みの場合は、法定申告期限から5年以内であれば「更正の請求」により修正可能です。

⑥ 医療費控除との関係

この給付金は損害補填金ではないため、医療費控除額の減額対象にはなりません。

★注意

補助金・見舞金など他の支給金との混在は、性格を明確にして処理することが重要です。

【№6 FAQ】

① この給付金は確定申告で申告が必要ですか?
→ 不要です。非課税所得のため、申告書への記載は不要です。

② 配偶者や親族が受け取る場合でも非課税ですか?
→ はい。所得税基本通達9-20により、身体に傷害を受けた者の親族が受け取る場合も非課税です。

③ 医療費控除の対象になりますか?
→ なりません。給付金は医療費補填ではなく、損害補償に類する給付です。

④ 住民税にも影響はありますか?
→ ありません。非課税所得のため、住民税にも加算されません。

⑤ 法人の会計処理はどうすればいいですか?
→ 預り金として処理し、収益には計上しません。

⑥ 税務署に証明書類を出す必要はありますか?
→ 通常不要ですが、照会があれば給付通知書のコピーで対応可能です。

⑦ 他の給付金とまとめて受け取った場合の判定は?
→ 支給目的ごとに課税・非課税を判断します。

⑧ 静岡市や浜松市の医療機関でも対象になりますか?
→ はい。全国一律の制度であり、静岡・浜松地域の医療機関・受給者も対象です。

⑨ 給付金の原資はどこから来るのですか?
→ 損害保険会社から返還された保険料を原資としています。

⑩ 給付金を誤って申告してしまいました。どうすれば?
→ 更正の請求を行い、非課税所得として訂正します。

【№7 まとめ】

今回の国税庁の文書回答は、「医療関連の給付金がどのような場合に非課税となるのか」を明確に整理した重要な事例です。
過去の「産科医療補償制度」における判断を踏襲しつつ、改定後の「特別給付事業」にも一貫して同じ非課税の考え方が適用されました。
この判断により、過去に補償の対象外だったご家庭や、すでに児が亡くなっているケースでも、
改定後の基準に該当すれば安心して給付を受けられるようになりました。
★重要
本給付金は「損害保険契約に基づく保険金に類するもの」として非課税。
所得税・住民税ともに課税なし。確定申告も不要。
医療費控除への影響もなく、課税所得にも加算しない。
会計処理は「預り金」で行い、収益計上は不要。
医療機関・自治体・遺族すべてに共通する取扱いルール。
特に、静岡や浜松の医療法人・助産所・自治体では、この判断を参考に実務処理を進めることで、
不要な課税や誤申告を防ぐことができます。
また、同様の給付金(例:福祉給付金、医療事故補償金など)についても、
「損害の補填目的か」「身体の傷害に基因するか」を見極めることが、非課税判定の最大のポイントです。
今回の制度改正は単なる税務の話ではなく、長年救済されなかった方々への社会的な配慮の一環でもあります。
税務実務を通しても、制度の意義を理解し、正しく支援を届けることが求められています。

【№8 出典】

出典:『税務通信』第3859号(2025年7月14日)「国税庁 産科医療特別給付事業に係る給付金で文書回答」税務研究会
参考:国税庁タックスアンサー「No.1900 非課税となる所得」(参照日:2025-10-08)
参考:e-Gov法令検索「所得税法第9条(非課税所得)」および「所得税法施行令第30条」(参照日:2025-10-08)

【№9 該当条文の説明】

ここでは、今回の産科医療特別給付事業に関係する主要な法令を、条文の趣旨・背景とともに解説します。

① 所得税法第9条第1項第18号
この条文は、「非課税所得」を定めた中心的な規定です。
中でも第18号は、「損害保険契約に基づき支払を受ける保険金または損害賠償金で、心身に加えられた損害に基因して取得するもの」は課税しないと明記しています。
つまり、けがや病気など身体への損害を補う目的の給付は、所得税の対象外とされるのです。
この考え方は、損害を補う目的の給付を「新たな所得」とみなすのは不適切、という公平課税の原則に基づいています。
たとえば交通事故の損害賠償金、労災保険の給付金、損害保険会社からの保険金などもこの条文によって非課税になります。
今回の産科医療特別給付金も、「医療事故による身体的損害の補填」であるため、ここに含まれます。

② 所得税法施行令第30条
この施行令は、上記第9条の非課税範囲をより詳細に定義したものです。
ここでは、非課税となる具体例として、
身体に傷害を受けた本人が受け取る給付
身体に傷害を受けた者の配偶者、直系血族、または生計を一にする親族が受け取る給付
を含むと定めています。
つまり、本人が亡くなっていても、配偶者や親族が受け取る給付金が「傷害に基因するもの」であれば、
同様に非課税所得と判断されるという点が極めて重要です。
この考え方が、今回の文書回答における非課税の決定打となりました。

③ 所得税基本通達9-20
この通達は、条文の具体的な運用基準を示す国税庁の内部解釈です。
ここでは、身体の傷害に基因する給付金等が非課税となる条件を明確に示しており、
給付金が損害を補うものであること
二重補償や利益供与を目的としないこと
受給者が本人またはその親族であること
の3要件を満たす場合に限って、非課税とされると解釈されています。
今回の給付金は、補償金に充てられず返還された保険料を原資としているため、
「損害保険契約に基づく保険金と同様の性質を有する」と判断され、通達上の非課税要件をすべて満たしています。

④ 制度運用上の背景
この非課税判断の根底には、「社会保障的配慮」という重要な理念があります。
産科医療補償制度は、産科医療の安全性確保や、医師不足の改善を目的として設立されたものであり、
税法上もこれを“公的性格の強い制度”とみなして特別に保護しています。
そのため、受給者に金銭的負担を課さないよう、課税の対象外とする判断が一貫して取られているのです。

⑤ 実務でのポイント
税務調査などで確認される際は、給付金の支給根拠となる「通知書」または「制度概要資料」を提示することで非課税の証明が可能。
税理士が申告相談を受ける場合は、給付金の発生原因を「身体の傷害に起因するもの」として整理することが重要。
類似の給付(例:公的見舞金、福祉給付金など)でも、損害補償的な性質を持つものは、この条文群の適用対象になり得ます。

★重要まとめ
所得税法第9条は「損害補填目的の給付金は課税しない」と定める基本原則。
施行令第30条・通達9-20が、配偶者や親族への非課税適用範囲を拡張。
給付金が「身体の傷害に基因するもの」であれば、名目や形式を問わず非課税扱いとなる。
税務上の確認では、「支給目的の明示」が最大の判断要素となる。

【№10 おわりに】

最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、静岡市、浜松市から全国の中小企業をサポートする最高のIT税理士法人にお気軽にご相談くださいませ!
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