相続税法上の平均余命と2つの生命表
2025年10月26日
【№1】はじめに
こんにちは!
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私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「相続税法上の平均余命と2つの生命表」についてお伝えさせていただきます!
相続税の実務では、被相続人や相続人の「平均余命」を用いる場面がいくつかあります。
たとえば、物納制度の延納年数の上限を定める場合や、定期金(年金)の評価額を計算する際などです。
このとき、どの「生命表(せいめいひょう)」を基に平均余命を求めるかがポイントになります。
生命表には「完全生命表」と「簡易生命表」の2種類があり、似ているようで使い方が異なります。
今回の令和7年度改正で、相続税法基本通達が一部見直され、平均余命の算定根拠として「完全生命表」が明確に位置づけられました。
この記事では、この「2つの生命表の違い」と「相続税法上の取扱い」をやさしく整理していきます。
【№2】結論
★結論
相続税法における平均余命の算定は、「完全生命表」に基づき行うことが原則です。
「簡易生命表」は毎年更新される速報的な統計ですが、法令上の算定や物納限度額などの法的判断では使用しません。
国税庁の通達改正により、「延納年数の上限」や「終身定期金の評価額」を求める際には、完全生命表に掲載された平均余命を用いることが明確化されました。
したがって、税務実務で生命表を使用する場合には、
① どちらの生命表を使うのか、
② 公表時期と対象年齢を正確に確認する、
③ 統計の根拠(e-Statや厚生労働省の発表資料)を明示する、
の3点が重要です。
特に令和7年度改正後は、誤って「簡易生命表」を基準に計算すると、評価額や物納上限年数が誤るおそれがあります。
【№3】やさしい解説
生命表とは、ある年齢の人が今後何年生きられるかを統計的に示した表です。
これは単なる平均値ではなく、「年齢ごとの死亡率をもとに、あと何年生きる可能性があるか」を計算したものです。
【2つの生命表の違い】
① 完全生命表:
国勢調査の確定人口と、死亡・出生の確定データに基づき、5年ごとに作成。
日本全体の確定値として信頼性が高い。
例:令和4年3月公表の第23回完全生命表。
② 簡易生命表:
推計人口と概数統計に基づき、毎年作成される速報版。
最新の傾向を把握するには便利だが、推計値のため精度は劣る。
たとえば、80歳男性の平均余命を見ると、
完全生命表では約9.3年、
簡易生命表では約9.0年、
とわずかに差があります。
この差は0.3年ほどですが、相続税や物納の算定では金額に大きく影響する場合があります。
【相続税での使い分け】
相続税法では、平均余命を用いる主な場面が2つあります。
1. 物納制度における延納年数の上限計算
2. 定期金(年金)の評価額の算定
これらはいずれも法律・通達で「完全生命表による」とされています。
つまり、「簡易生命表」は相続税実務では参考資料として扱うにとどまり、
評価・延納などの法的手続きには使いません。
【№4】具体例
① 物納制度の延納年数を求める場合
→ 平均余命は完全生命表を使用(相令17)。
② 終身年金の評価を行う場合
→ 完全生命表に掲げる平均余命で計算(相法24①三ハ)。
③ 年齢別の死亡確率を参考に生命保険の時価評価を検討する場合
→ 完全生命表を用いて基礎率を確認する。
④ 「簡易生命表」で試算した延納年数を税務署に提出したケース
→ 修正を求められ、再計算となる可能性あり。
⑤ 相続税の申告補助資料として最新動向を説明したい場合
→ 「簡易生命表」は説明資料として添付可(ただし注記を付す)。
⑥ 配偶者の平均余命を基に定期金評価を行う際
→ 性別・年齢ごとの完全生命表データを参照。
⑦ 70歳男性の延納年数計算で、平均余命を9年と誤記
→ 最新の完全生命表では約12年となり、誤差3年分の違いが生じる。
⑧ 物納許可限度額を申請する際の添付書類
→ e-Statでダウンロードした完全生命表を提出。
⑨ 資産承継プランニング時に寿命予測を参考にする場合
→ 税務計算は完全生命表、将来予測は簡易生命表を補足的に使用。
⑩ 法務局提出書類に添付する平均余命資料
→ 完全生命表を正式データとして添付(統計法第2条第4項三)。
【№5】手順(平均余命の参照方法)
相続税法上の平均余命を使用する際は、単に数値を抜き出すだけでなく、
「どの生命表を参照したのか」「公表日・出典をどのように明記したのか」が非常に重要です。
この手順を誤ると、延納年数や評価額が数十万円単位で変動することもあります。
以下では、静岡・浜松の税務現場でもそのまま使える、実務レベルの参照手順を解説します。
① 厚生労働省またはe-Stat(政府統計総合窓口)にアクセス
→ 検索欄に「第23回 完全生命表」と入力。
令和4年3月公表分が最新(次回は令和9年3月予定)。
「完全生命表」「簡易生命表」どちらも確認できるが、必ず前者を優先。
② 「男女別・年齢別の平均余命表」を開く
→ 性別ごとに分かれたデータから、該当年齢を横軸で探す。
80歳男性なら「9.34年」、80歳女性なら「11.66年」など、1歳単位で異なる数値が掲載。
③ データ形式を確認し、再現性を確保
→ PDFは印刷用、Excelは実務用として最適。
社内資料に引用する際は、セル参照のまま貼付することで誤入力を防げます。
④ 最新版を常に優先使用
→ 税務署に提出する際、「旧生命表を用いた評価」は修正を求められる可能性があります。
公表年を明示し、社内の相続担当者間でも使用年次を統一しておきましょう。
⑤ 性別・年齢を正確に選択
→ 平均余命は1年単位で異なるため、「満年齢」で判断すること。
「数え年」で算出すると誤差が生じます。
⑥ 相続税・贈与税の評価書・申請書類に記載
→ 「平均余命:完全生命表(厚生労働省・第23回)による」と明記。
特に物納許可限度額や延納期間の算定書では、この表記が信頼性の裏付けになります。
⑦ 出典資料の添付と保存
→ e-StatのURL・参照日・発表機関を記載した上で、生命表を印刷・PDF化して添付。
税務調査の際に根拠資料を求められても、即時提示できます。
⑧ 簡易生命表を利用する際の注意
→ 年次推計値であり、税務計算の基礎には使えません。
顧客説明用や試算資料として用いる場合、「速報値に基づく概算である」と明示してください。
⑨ チェックリストの整備(実務担当者向け)
使用表は「完全生命表」であるか?
公表回(第23回など)と参照日を記載したか?
年齢・性別の選択は正確か?
出典URLを資料に記載したか?
添付資料を保存したか?
⑩ 更新・再確認のタイミング
→ 生命表は5年ごとに更新されます。
相続案件が長期化している場合(例:延納申請や未分割申告)では、途中で改訂があるかを必ず再確認。
「評価時点で最新の生命表を採用」するのが原則です。
⑪ 専門家としての実務アドバイス
平均余命は単なる統計値ではなく、納税計画・遺産分割・物納可否判断の基礎データです。
特に静岡・浜松など高齢化の進む地域では、延納・物納を検討する案件が多く、
生命表の誤用が延納年数・許可限度額の誤差に直結します。
したがって、担当税理士や相続専門チーム内で「最新版の完全生命表を共通データとして管理」することが最も実務的です。
【№6】FAQ(よくある質問10問)
① 平均余命とは何を意味しますか?
→ ある年齢の人が、統計的にあと何年生きられるかという期待値です。医療や税務、保険などの多分野で使われています。
② 完全生命表と簡易生命表の違いは?
→ 完全生命表は5年ごとに確定データから作成され、国勢調査を反映した正式統計です。簡易生命表は毎年の推計値で速報的な位置づけです。
③ 相続税法でどちらを使うのが正しいですか?
→ 相続税法では「完全生命表」を使用することが明確に定められています。
④ 令和7年度の改正点は何ですか?
→ 物納制度の延納年数の上限を、納期限時の平均余命とし、その基準を完全生命表とした点です。
⑤ 定期金(終身年金)の評価でも完全生命表ですか?
→ はい。相法24条および相続税評価通達(相規12の6)により、完全生命表を用いて評価します。
⑥ 「簡易生命表」を使用しても問題ない場面は?
→ 学術的説明や将来予測など、税務判断を伴わない場面では使用して構いません。
⑦ 平均余命の差はどれくらいですか?
→ 例えば80歳男性で約0.3年、女性で約0.2年ほどの差があります(令和7年時点)。
⑧ e-Statでどのように生命表を確認しますか?
→ 「第23回完全生命表」などで検索し、該当年齢と性別の平均余命を確認します。PDF・Excel形式でダウンロードも可能です。
⑨ 静岡や浜松の地域別生命表はありますか?
→ 都道府県別の簡易生命表が毎年公表されています。ただし相続税の計算では全国平均の完全生命表を用います。
⑩ 税務署に提出する際の注意点は?
→ 出典を明確に記載し、「完全生命表による」旨を明示してください。誤って簡易生命表を用いた場合、再提出を求められることがあります。
【№7】まとめ
今回のテーマは、「平均余命に基づく相続税の実務処理」でした。
改正後の実務では、「完全生命表」を正しく理解し、常に最新版を確認することが求められます。
★重要
法的手続(物納・定期金評価)では完全生命表のみ使用可能。
簡易生命表は速報値のため、補助的な参考資料にとどめる。
出典を明記し、誤用による税額の差異を防ぐ。
静岡・浜松など地方都市でも、土地相続や自宅評価に伴い物納・延納を選択するケースは増えています。
その際、平均余命を誤って算定すると延納年数が短くなり、納税資金計画に支障を来すおそれがあります。
税務署や金融機関に提出する際は、生命表の出典(厚労省・e-Stat)を明記し、申請書類の整合性を保つことが実務の基本です。
また、生命表は年齢別に小数点第2位まで公表されています。単純な四捨五入では誤差が生じることもあるため、算出時は正確な値を引用することをおすすめします。
【№8】出典
出典:『税務通信』第3860号(2025年07月21日)「相続税法上の平均余命と2つの生命表」
参考:国税庁タックスアンサー「No.4145 相続税の物納制度」(参照日:2025-07-21)
参考:e-Gov法令検索「相続税法第24条・相続税法施行令第12条の6」(参照日:2025-07-21)
参考:厚生労働省「第23回完全生命表」「令和6年簡易生命表」(参照日:2025-07-21)
【№9】該当条文の説明
● 相続税法第24条(定期金に関する権利の評価)
定期的に支払われる年金などの権利の価値を計算する際、受給者の平均余命に基づいて現在価値を求めることを規定しています。
特に終身定期金では「平均余命=残りの支払期間」の根拠となり、ここに完全生命表が使われます。
● 相続税法施行令第12条の6(平均余命の基準)
平均余命は「完全生命表に掲げる数値を用いる」と明記されており、法的根拠が明確です。
これにより、納税者・税務署双方で統一基準をもって延納年数や定期金評価を行えます。
● 相続税法基本通達(相令17・相基通24-3)
物納許可限度額や延納期間の算定においても、完全生命表を根拠とすることを示しています。
実務上は、年齢別平均余命を明確に記載した表を添付することが推奨されます。
★補足
生命表の使用基準を統一したことで、従来の「簡易生命表と完全生命表の混在」による不統一が解消されました。
また、平均余命は「相続開始日」ではなく「納期限時点」で判断するため、計算基準日にも注意が必要です。
静岡市や浜松市のように高齢化が進む地域では、物納・延納の選択が増加しています。
生命表を誤用すると、延納期間や許可額に数百万円単位の差が出ることもあるため、実務担当者は最新表の更新時期(令和9年3月予定)を把握しておくと安心です。
【№10】おわりに
最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、静岡市、浜松市から全国の中小企業をサポートする最高のIT税理士法人にお気軽にご相談くださいませ!
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