イノベーションボックス税制の適用と留意点
2025年10月28日
【№1】はじめに
こんにちは!
静岡市、浜松市から全国へ向けて「IT×税務会計×補助金=経営革新」を発信して、「日本一わかりやすい税理士事務所」を目指す最高のIT税理士法人です!
私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「イノベーションボックス税制の適用と留意点」についてお伝えさせていただきます!
令和6年度税制改正で新設された「イノベーションボックス税制(特許権等の譲渡等による所得の課税の特例)」は、研究開発の成果をさらに活かすための重要な税制です。
これまでの研究開発税制が「研究段階の支援」であったのに対し、本制度は「成果段階の支援」に焦点を当てています。
企業が自ら開発した特許権やAIプログラムなどの知的財産を譲渡または貸し付けた際、その所得の30%を損金算入できる――つまり法人税が軽減される仕組みです。
研究開発のリスクを取って成果を生み出した企業に、再投資の原資を残すことを目的としています。
日本企業のイノベーション投資は長年にわたり研究段階で止まりがちでした。
この新制度により、「開発→活用→収益化→再投資」という好循環を生み出すことが期待されています。
特に静岡や浜松の製造業・AI関連企業にとっては、研究成果の商用化・海外展開を後押しする制度といえます。
【№2】結論
イノベーションボックス税制は、次の3つのポイントに集約されます。
① 対象は「特許権」および「AI関連プログラム著作物」
② 譲渡・貸付による所得の30%を損金算入できる(実質的な法人税軽減)
③ 対象は令和7年4月1日から令和14年3月31日までに開始する事業年度
対象となる知的財産を自ら創出していることが条件であり、他社から購入した特許やライセンスは原則除外されます。
また、制度適用のためには経済産業大臣の証明を受ける必要があります。
静岡・浜松地域の中小企業がこの制度を活用する場合、特許申請時から「経済産業大臣の証明」を見据えた研究開発体制を整えることが重要です。
【№3】やさしい解説
研究開発税制は、開発段階での費用に対して税額控除を受ける制度でした。
一方、イノベーションボックス税制は「成果から得られる所得」を優遇します。
つまり、研究開発に成功して得られた「特許」や「AIプログラム」から収益を得たとき、
その一部を税務上の損金として扱えるようになるのです。
これにより、法人税率約30%の企業であれば、最大で約9%の実効税率軽減効果が得られます。
具体的には、特許の使用料やライセンス収入が1億円ある場合、
そのうち約3,000万円が損金算入され、法人税額が約900万円軽減されます。
この制度は「自己創出比率」という考え方に基づき、
自社の研究開発による貢献割合が高いほど、控除できる金額も大きくなります。
例えば:
自社で特許を開発し、海外にライセンス提供 → 全額対象
親会社から取得した特許を活用 → 自己創出比率が低く、対象は限定的
また、グループ通算制度を適用している場合は、グループ全体の所得を考慮して控除額を算定します。
このように、制度設計そのものが「国内で研究開発を行い、国内で知的財産を活用する企業」を優遇する構造となっています。
静岡県内の製造業・AI開発企業にとっても、地方拠点でのR&Dを続けるインセンティブとなるでしょう。
【№4】具体例
以下は、イノベーションボックス税制の理解を深めるための実務的な10の具体例です。
各例に「対象可否の理由」と「税務実務上の注意点」を加えました。
① 自社で開発した特許技術を国内企業にライセンス提供 → 対象
例:静岡市の製造業A社が自社開発の機械制御特許を他社へ年間1,000万円で貸与。
→ 特許は自社創出であり、経済産業大臣の証明があれば適用可能。
★注意:契約書に使用許諾の範囲(国内外・期間・技術範囲)を明示しておくこと。
② 自社開発AIアルゴリズムを外部企業に利用許諾 → 対象
AIプログラムは「AI関連プログラム著作物」として対象に含まれます。
★注意:アルゴリズム部分の知的財産権を自社が保有していることを証明できる必要あり。
③ 他社から購入した特許を再販 → 対象外
自己創出ではないため適用外。ただし、購入後に自社技術を加えて再開発し、
改良特許として登録した部分については対象になる場合があります。
④ 海外関連会社への特許譲渡(関連者取引) → 原則対象外
国外への譲渡は、日本国内の所得計算に含まれないため対象外。
★注意:海外子会社に技術移転する場合は移転価格税制にも留意が必要。
⑤ 社内研究チームが共同で製作したAIプログラムを販売 → 対象
研究費を全額自社負担していれば100%対象。
共同開発の場合は、負担割合に応じて自己創出比率を計算します。
⑥ 外部委託で開発したソフトを自社名義で特許取得 → 対象(自社負担部分のみ)
外注委託費の支払証憑があり、自社が費用を負担していれば適用可能。
★注意:委託契約書に「成果物の知的財産権は委託者に帰属」と明記すること。
⑦ 特許権とノウハウをセット販売 → 契約書で金額区分されていれば対象
例えば総額5,000万円のうち特許使用料3,000万円、ノウハウ料2,000万円などと区分できればOK。
★注意:区分がない場合は全額が対象外とされるリスクが高い。
⑧ クロスライセンス(相互利用)契約 → 対価明示があれば対象
相互無償の場合は対象外ですが、明確に金額を設定した相互使用契約なら適用可能。
★注意:無償交換は「対価の授受」がないため税務上の所得認識が発生しません。
⑨ 海外支店が研究開発したプログラム → 対象外(国内創出が要件)
日本国内で創出された資産のみが対象。海外拠点での開発成果は除外されます。
★注意:開発日誌・サーバーログ・研究員の勤務実績などで国内創出を証明しておくこと。
⑩ パテントプール(共同管理)によるロイヤルティ収入 → 契約で区分明示あれば対象
共同出願であっても、自社が保有する権利分の収入部分のみ対象。
★注意:プール契約に基づく分配金の内訳を明確にしておく必要があります。
⑪ 大学や研究機関との共同開発プロジェクト → 自社負担部分のみ対象
公的研究機関と共同研究を行った場合も、企業側が実質的に費用負担・管理している分は対象。
★注意:研究委託契約書に費用分担と知財帰属を明記すること。
⑫ 子会社が開発した特許を親会社が使用 → 対象外(名義貸しと判断)
親会社が実質的な開発主体であれば、子会社名義での登録は避けることが望ましい。
★重要
契約書の文言ひとつで「対象」「対象外」が分かれます。
とくに「知的財産権の帰属」「対価の区分」「研究費の負担割合」の3点を明確にしておくことが実務上の肝要です。
静岡・浜松地域の企業が制度適用を受ける際も、契約書レビューと証憑管理の体制づくりが欠かせません。
【№5】手順
イノベーションボックス税制を適用するための手続きは、以下の流れで進めます。
初めての企業でも理解しやすいよう、時系列で整理しました。
① 対象資産の特定
まず、自社が保有する知的財産の中から、制度の対象となる「特許権」「AI関連プログラム著作物」を抽出します。
登録済み特許だけでなく、出願中でも適用可能な場合がありますが、将来的に特許が失効した場合のリスクも考慮が必要です。
② 自己創出比率の算定
税制の肝となるのが「自己創出比率」です。
これは、開発に要した費用のうち自社が負担した割合を示すもので、
委託研究や共同開発がある場合には、各社の分担を明確にしておく必要があります。
たとえば、自社負担が全体の70%であれば、譲渡所得の70%部分が対象になります。
③ 経済産業大臣の証明申請
本制度は、経済産業省の証明を受けて初めて適用可能です。
証明書には、対象資産の種類、創出の経緯、事業への活用状況などが明記されます。
特許庁データベースや社内研究記録をもとに、証明申請書を整える必要があります。
④ 税務申告時の添付書類
法人税申告書に添付する書類として、
- 証明書の写し
- 自己創出比率の計算書
- 対象所得の計算明細
などが必要です。
税務調査時には、研究費の会計処理、プロジェクト台帳、契約書の提示を求められる場合があります。
⑤ グループ通算制度との関係整理
グループ企業で特許を保有し、他の法人が使用するケースでは、
どの法人の所得に損金算入が反映されるかを明確にする必要があります。
グループ全体の研究開発体制を統一し、会計と税務の整合を取ることが重要です。
⑥ 適用時期とスケジュール管理
令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用開始のため、
それ以前に開発した知財も、取得日や譲渡日がこの期間内であれば対象となります。
計画的にスケジュールを組み、証明取得に要する期間(通常2〜3か月)を見込む必要があります。
【№6】FAQ
① Q. イノベーションボックス税制は中小企業でも利用できますか?
A. はい、可能です。大企業限定ではなく、中小企業でも自社で特許やAIを開発していれば対象です。
② Q. 他社との共同開発で成果物を共有している場合は?
A. 自社が負担した研究費割合に応じて自己創出比率を算定し、その分のみ適用可能です。
③ Q. ソフトウェアの著作権登録がなくてもAIプログラムとして認められますか?
A. 仕様書やソースコードで開発の実態が確認できれば対象となることがあります。
④ Q. 特許の譲渡ではなく、ライセンス契約でも対象ですか?
A. はい。譲渡だけでなく、貸付(ライセンス)による使用料収入も対象です。
⑤ Q. 税務署に証明を提出すれば自動的に適用されますか?
A. いいえ。経済産業大臣の証明取得が必須です。証明がない場合は認められません。
⑥ Q. 自社開発AIをクラウドサービスとして提供している場合は?
A. 利用契約内容によります。プログラム部分の使用料が特定できれば適用可能です。
⑦ Q. 既存の研究開発税制との併用はできますか?
A. はい。ただし、同一の費用を重複して控除することはできません。
⑧ Q. 適用期間終了後に譲渡した場合は?
A. 令和14年3月31日までに開始する事業年度が対象。それ以降は適用外となります。
⑨ Q. 静岡や浜松の企業でも証明手続きは可能ですか?
A. はい。全国一律の制度です。静岡県内企業もオンラインで申請可能です。
⑩ Q. 対象資産が複数ある場合、証明はまとめて申請できますか?
A. 原則として資産ごとに申請が必要です。ただし同一プロジェクトで一体管理されている場合はまとめて可です。
【№7】まとめ
イノベーションボックス税制は、企業の知的財産戦略に新たな武器を与える制度です。
研究開発で終わらせず、知財を活用して利益を再投資へとつなげることが可能になります。
特に静岡や浜松地域の企業は、製造・機械・AI・バイオなど多様な技術を持つ中小企業が多く、
本制度を活用することで、技術力を維持しながら資金調達力を高められます。
★注意
制度の趣旨は「国内で創出された知的財産の活用支援」であるため、
国外開発や名義貸し的な取引では適用できません。
税務調査で指摘を受けないよう、契約書・研究記録・開発経費を明確に残しておくことが不可欠です。
経営者が制度を理解して戦略的に活用すれば、法人税負担の軽減だけでなく、
国内R&D拠点の維持、技術承継、人材確保にもつながります。
知的財産を「守る」だけでなく「活かす」時代に、
この制度は中小企業経営の大きな転換点となるでしょう。
【№8】出典
出典:『税務通信』第3861号(2025年7月28日)「イノベーションボックス税制の適用と留意点」
参考:国税庁タックスアンサー「研究開発税制とイノベーションボックス税制の違い」(参照日:2025-07-28)
参考:e-Gov法令検索「租税特別措置法 第42条の12の11」「租税特別措置法施行令 第27条の12の11」(参照日:2025-07-28)
【№9】該当条文の説明
① 租税特別措置法 第42条の12の11(特許権等の譲渡等による所得の課税の特例)
この条文は、企業が自ら開発した特許権やAI関連プログラムの譲渡・貸付により得た所得について、
その30%を損金算入できる旨を定めています。
制度の目的は、研究開発段階だけでなく、知的財産を活用して得られる成果を再投資に回すことにあります。
② 租税特別措置法施行令 第27条の12の11
ここでは、制度の対象資産・所得・損金算入の計算方法が具体的に定義されています。
「AI関連プログラム著作物」が明示的に含まれており、デジタル技術分野への適用を明確化しています。
③ 経済産業省令(証明に関する規定)
経済産業大臣が発行する証明書の様式・申請手続・審査基準を定めたものです。
申請者は、研究内容・費用・成果の独自性を示す資料を提出し、認定を受ける必要があります。
④ 租税特別措置法通達 42の12の11-3
通達では、特許権やプログラムの譲渡・貸付に伴う複合契約(ノウハウ、商標等を含む)の場合、
特許部分の対価が合理的に区分されていれば適用可能とされています。
⑤ 制度背景:令和6年度税制改正大綱
本制度はOECD各国の「Patent Box制度」を参考に設計されました。
特に英国やフランスの事例を踏まえ、日本独自にAI関連プログラムも対象に加えた点が特徴です。
【№10】おわりに
最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、
静岡市、浜松市から全国の中小企業をサポートする最高のIT税理士法人にお気軽にご相談くださいませ!
※当事務所はDXを経営に活かすことを推進しており、当ブログはAIを活用して生成しています。
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