永年勤続者への旅行券と給与課税

2025年10月29日

【№1】はじめに

こんにちは!
静岡市、浜松市から全国へ向けて「IT×税務会計×補助金=経営革新」を発信して、「日本一わかりやすい税理士事務所」を目指す最高のIT税理士法人です!
私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「永年勤続者への旅行券と給与課税」についてお伝えいたします!
企業が長年勤務した社員に対して「感謝の気持ち」を表すために旅行券や記念品を贈ることはよくあります。
しかし、こうした贈与は“福利厚生の一環”と考えられがちでも、税務上は給与課税の対象になる場合があります。
たとえば、旅行券に有効期限がなく現金同様に使えるものは「実質的に現金を支給した」とみなされ、所得税の課税対象となるのです。
では、どのような場合に「課税される」または「課税されない」のでしょうか?
また、課税の対象外にするためには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか?
本稿では、所得税法や個別通達を基に、永年勤続表彰に伴う旅行券・記念品などの取扱いをわかりやすく解説します。
特に静岡・浜松地域の中小企業で実務を担当する経理担当者・総務人事担当者の方々に向け、判断の分かれ目を明確に示します。

【№2】結論

★結論から言えば、「永年勤続表彰で贈る旅行券や記念品」は、次の要件を満たせば給与課税の対象外になります。
① 勤続期間が10年以上であること。
② 同一人が2回以上表彰を受ける場合、5年以上の間隔をあけること。
③ 旅行や記念品の内容・金額が社会通念上相当であること。
④ 旅行券を渡す場合は、次の条件を全て満たすこと。
 [ア] 支給後1年以内に旅行が実施されること。
 [イ] 旅行先や費用が支給額に見合っていること。
 [ウ] 実施後に報告書(旅行先・日程・費用)を提出すること。
 [エ] 未使用分の旅行券は返還すること。
上記①〜④を満たす場合、旅行券や旅行自体は給与課税の対象外です。
逆に、有効期限のない旅行券や、グルメ・家電なども選べるカタログギフトなどは「換金性が高い」と判断され、原則として給与課税の対象になります。
さらに、注意すべきは「公平性」と「制度の継続性」です。
表彰の対象者や基準が曖昧だと、税務調査で給与とみなされるおそれがあります。
静岡や浜松の中小企業でも、永年勤続表彰制度を導入する際には、社内規程に明文化し、報告書や返還記録を保管しておくことが大切です。
形式的な表彰でも、実態として従業員の功労をねぎらうものであれば、非課税措置の適用が可能となります。

【№3】やさしい解説

給与課税の考え方の基本には、「現金でなくても実質的にお金の価値を受け取ったなら、それは給与と同じである」という原則があります。これを「経済的利益の供与」と呼びます。たとえば、現金の代わりに百貨店商品券や旅行券を支給された場合、それが“好きな用途に自由に使える”ならば現金支給と変わらないと判断されます。
一方で、永年勤続表彰のように「功労をねぎらう社会的慣習に基づく支給」は例外的に非課税とされています。つまり、国税庁は“労務の対価”ではなく“表彰の一環”と認める場合に限って課税を免除しているのです。
この線引きの根拠となるのが、所得税基本通達36-21および個別通達(昭和60年直法6-4)です。これらは、勤続10年以上の従業員に対して旅行や記念品を渡す際に、「社会通念上相当」と認められる金額であれば非課税とする考え方を明確にしています。
ただし、「社会通念上相当」とはあいまいな言葉に聞こえますが、実務的には「同規模・同業種の一般的水準と比較して妥当かどうか」で判断されます。たとえば静岡市や浜松市の中堅製造業であれば、1人あたり2万〜5万円程度の旅行が妥当とされるケースが多いです。
また、旅行券を渡す場合は“使途限定・返還義務あり”の運用を徹底することが不可欠です。社員が自由に換金したり、1年を超えて保管していると給与扱いになる可能性があります。旅行実施報告書の提出や、使用期限の管理を行うことで、税務リスクを最小化できます。
さらに注意すべきは「公平性」です。表彰対象者を明確にせず、特定の社員のみ恣意的に選定した場合、制度全体が給与性を帯びてしまいます。
つまり、非課税を維持するためには、「①継続的に実施されている制度であること」「②全従業員を公平に扱うこと」「③金額が妥当であること」の三条件を満たす必要があるのです。
このように、永年勤続表彰は単なる“感謝の贈り物”ではなく、明確なルール運用と証跡管理を伴う“税務上の制度”として捉えることが大切です。

【№4】具体例

実務で誤りが起こりやすい永年勤続表彰に関する10のケースを紹介します。
それぞれ課税・非課税の判断理由も添えています。
① 勤続10年の社員に3万円分の旅行券を支給し、社員が1年以内に使用した。
→ 非課税。勤続年数・金額・実施時期がすべて条件を満たしている。
② 勤続5年の社員に1万円分の旅行券を支給。
→ 課税。勤続10年未満の者への支給は社会通念上「永年勤続表彰」とみなされない。
③ 勤続20年社員に現金5万円を支給。
→ 課税。旅行券や記念品でなく、現金支給は原則給与とされる。
④ 勤続15年社員に旅行券5万円分を渡したが、使用せず2年経過。
→ 課税。支給後1年以内に旅行を実施していないため対象外。
⑤ 旅行ではなく、旅行会社指定のカタログギフトから旅行・家電を選べる形式。
→ 課税。旅行以外の選択肢があるため、金銭支給と同様に扱われる。
⑥ 会社が全社員を対象に「勤続表彰旅行」を実施し、費用を会社が直接支払い。
→ 非課税。旅行が会社主催であり、換金性がないため給与課税されない。
⑦ 勤続30年表彰でペア宿泊券を支給し、本人が家族旅行に使用。
→ 非課税。家族同行も社会通念上許容範囲内。
⑧ 旅行券を配布後、本人が転職して使用しなかった。
→ 課税。返還義務を定めていないため給与とみなされる。
⑨ 勤続10年・15年で2回表彰したが、5年未満の間隔で実施。
→ 課税。所得税基本通達36−21の要件②に違反。
⑩ 旅行ではなく高級腕時計を記念品として支給(10万円相当)。
→ 非課税の可能性あり。ただし「社会通念上相当」であることが条件。
★注意
「社会通念上相当」とは、一般企業の慣行や金額相場(概ね1〜3万円程度)を指します。
業種・規模によって異なりますが、過大な支給は課税リスクが高まります。

【№5】手順(実務処理の流れ)

永年勤続表彰で旅行券等を支給する際の社内手続きと税務対応をまとめます。
① 支給基準の明文化
まず、就業規則や社内表彰規程に「永年勤続表彰制度」を明示します。
勤続年数・対象者・支給内容・金額基準を明文化することで、税務上の合理性が保たれます。
② 支給内容の決定
旅行券・記念品・旅行実施のいずれとするかを決定。
換金性の高い金券は避け、「旅行限定」「有効期限付き」「返還義務あり」とするのが安全です。
③ 支給・実施の管理
旅行券配布後は、次の情報を社内で管理します。
支給日
対象者名
使用日・旅行先・金額
実績報告書の有無
④ 報告書の提出
社員に旅行日程や支払先、使用金額を報告書にまとめてもらいます。
1年以内に旅行を実施しない場合は、旅行券を返還してもらうルールを徹底します。
⑤ 経理処理
非課税の場合:福利厚生費で処理
課税対象の場合:給与として源泉徴収・年末調整に反映
⑥ 税務署対応の準備
税務調査では、「制度が継続的・公平に運用されているか」が確認されます。
対象者や金額に恣意性があると給与課税を指摘されることがあります。
★重要
永年勤続表彰制度は“形だけ”では認められません。
公平・継続・社会通念相当という3原則を満たすことが、課税回避の最大のポイントです。

【№6】FAQ(よくある質問10問)

① Q. 勤続10年未満の社員にも旅行券を渡したいが、課税を避ける方法は?
A. 永年勤続表彰ではなく「業績表彰」「功労賞」として扱うしかありません。給与課税は避けられません。
② Q. 有効期限が1年でも、旅行に使わず換金したら?
A. 給与課税対象です。実際に旅行で使用したかどうかが判断基準です。
③ Q. 旅行券ではなく、会社負担で社員旅行を実施した場合は?
A. 非課税です。ただし観光目的よりも「慰安・親睦」が主目的である必要があります。
④ Q. 記念品として家電や時計を選べるようにしたい。
A. 旅行に限定されない場合は課税対象。選択の自由度が高いと給与とみなされます。
⑤ Q. 社長(役員)にも同様に旅行券を支給してよい?
A. 原則課税対象です。役員賞与とされる可能性が高く、法人税法上も損金不算入です。
⑥ Q. 勤続10年表彰と退職記念を兼ねても問題ない?
A. 同一支給でも構いませんが、退職金性が強まると給与課税になります。
⑦ Q. 社内規程を作らず都度判断しているが問題ある?
A. 税務調査で恣意的運用とされるリスクがあります。必ず規程化しましょう。
⑧ Q. 社員が海外旅行を選んだ場合は?
A. 支給額に対して相当な範囲内であれば非課税。極端な高額旅行は課税リスクがあります。
⑨ Q. 家族分の旅行券を追加して渡すのは?
A. 一般的な範囲であれば非課税。ただし本人の勤続表彰が主目的であること。
⑩ Q. 社員旅行と永年勤続表彰旅行を同時開催した場合?
A. 表彰要素が含まれても、全社員対象であれば福利厚生費として非課税扱いが可能です。

【№7】まとめ

今回のテーマ「永年勤続者への旅行券と給与課税」では、
「感謝の気持ちで渡した旅行券」が、時に「給与」として課税されるという誤解の多い論点を整理しました。
★ポイントのまとめ
1. 非課税となるためには4つの要件を満たすこと。
 ①勤続10年以上、②5年以上の間隔、③社会通念上相当な金額、④旅行券使用に関する4要件(1年以内使用・報告書提出・返還義務など)。
2. 「旅行券=非課税」とは限らない。
 旅行以外に使えるカタログギフト・現金同等券は課税対象です。
3. 会計処理は福利厚生費 or 給与。
 非課税なら「福利厚生費」、課税なら「給与」として源泉徴収が必要です。
4. 役員への支給は原則課税。
 法人税法上の「役員賞与」となるため損金算入不可です。
5. 規程整備と証跡保管が肝心。
 税務調査では、継続性・公平性・金額妥当性の3点が重点確認項目です。
静岡・浜松の中小企業でも、従業員の定着やモチベーション維持を目的に永年勤続表彰制度を導入するケースが増えています。
その一方で、規程や証拠書類が整っておらず、課税リスクを抱えたまま運用している企業も少なくありません。
制度の整備こそが「社員の感謝を税務リスクにしない」最善の方法です。

【№8】出典

出典:『税務通信』第3861号(2025年7月28日)「永年勤続者への旅行券と給与課税」
参考:国税庁タックスアンサー「No.2591 永年勤続者に贈与する記念品など」(参照日:2025-10-14)
参考:e-Gov法令検索「所得税法第36条」「所得税基本通達36−21」(参照日:2025-10-14)
参考:個別通達「昭60直法6−4 永年勤続者に対する旅行券の課税関係」

【№9】該当条文の説明

● 所得税法第36条(給与所得)
給与とは、労務の対価として受ける金銭その他の経済的利益をいう。
この「経済的利益」の中に、旅行券や記念品など現物支給も含まれる。
● 所得税基本通達36−21(永年勤続者に対する表彰等の取扱い)
10年以上の勤続、5年以上の間隔、社会通念上相当額であることを条件に、給与課税しなくてよい旨を定める。
● 個別通達 昭60直法6−4
旅行券に関して、非課税とするための追加条件(1年以内使用・報告書提出・返還義務など)を示している。
★解説
通達の目的は、「企業の慣習としての表彰」を税務上過度に課税しないための調整にあります。
ただし、その運用には明確な条件が定められており、特に旅行券の換金性・用途制限の有無が大きな判断ポイントとなります。
国税庁も「社会通念上相当」という言葉で柔軟性を残しているため、最終判断は企業の実態と社内規程の整備状況に左右されます。

【№10】おわりに

最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、
静岡市、浜松市から全国の中小企業をサポートする最高のIT税理士法人にお気軽にご相談くださいませ!
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