過大支払利子税制に関する照会文書(金融庁公表)
2025年10月30日
【№1】はじめに
こんにちは!
静岡市、浜松市から全国へ向けて「IT×税務会計×補助金=経営革新」を発信して、「日本一わかりやすい税理士事務所」を目指す最高のIT税理士法人です!
私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「過大支払利子税制に関する照会文書(金融庁公表)」をお伝えさせていただきます!
今回のテーマである「過大支払利子税制」は、国際的な租税回避防止の潮流の中で誕生した重要な仕組みです。
企業がグループ内や海外との取引で過大な利息を支払うことで国内所得を圧縮することを防ぎ、
公正な課税を維持するために導入された制度です。
金融庁が令和7年6月に公表した照会文書では、この制度の中核概念である
「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」の解釈について、
OECDの国際基準を踏まえて判断することが適当と明示しました。
これは、単に専門的な論点にとどまらず、今後の企業経営・資金調達・会計処理に影響を与える実務的なテーマでもあります。
特に静岡や浜松の製造業・輸出業など、海外との取引が多い企業にとっては、
今回の改正趣旨を理解しておくことが、将来の税務リスクを防ぐ第一歩になります。
【№2】結論
令和7年6月24日、金融庁は「過大支払利子税制(租税特別措置法66の5の2)」の適用に関する重要な照会文書を国税庁に提出し、その回答を公表しました。
この文書では、政令で定義される「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」の範囲について、OECDのBEPS行動4「利子控除制限ルール」の考え方を踏まえることが適当であると明確化しています。
簡単に言えば、
「形式的な“利子”ではなく、経済的にみて“利子と同じ性質”を持つ支払も、過大支払利子税制の対象になる」
という立場を金融庁が確認した、ということです。
この照会文書は、企業の資金調達方法や金融派生商品の取扱いにも影響を及ぼす可能性があり、特にグループ内融資やヘッジ取引を行う法人では、会計処理と税務判断の整合性がより重要になります。
【№3】やさしい解説
過大支払利子税制は、平成24年度の税制改正で導入された「租税回避防止制度」です。
企業が海外やグループ内で過大な利息を支払い、国内所得を減らすことを防ぐための仕組みで、
損金算入できる利息額に上限を設けています。
★重要
令和元年度改正以降、この制度はBEPSプロジェクトの「利子控除制限ルール」に整合するよう見直されました。
つまり、日本だけの独自制度ではなく、国際的な課税ルールとリンクしています。
では、今回の照会で焦点となった「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」とは何でしょうか。
これは単なる金銭利息だけでなく、「経済的実質として利息に近い支払」も含む概念です。
例えば次のようなケースが該当します。
金利スワップ契約に基づき支払う金額
為替スワップ・通貨スワップにより実質的に利子を支払う場合
ヘッジ手段によって借入金の金利変動リスクを抑える際に発生する差額精算金
これらは私法上の「利息」ではありませんが、経済的には資金調達コストと同じ機能を果たすため、
税務上も「利子に準ずるもの」として扱うのが適切とされました。
★注意
一方で、単に「金利要素を含む取引」であるだけでは対象になりません。
スワップ契約でも、資金調達と無関係な独立取引であれば該当しないと明記されています。
このように、判断基準は「形式」ではなく「経済的な実質」にあります。
金融派生商品が多様化する中、企業の資金運用や財務戦略を税務上どう評価するか、
その指針を示したのが今回の照会文書です。
【№4】具体例
ここでは、実務で想定される10の具体例を紹介します。
「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」の判断基準を、実際の場面で整理してみましょう。
① 金利スワップ契約による支払金
借入金の金利変動を抑えるためのヘッジ目的で締結された金利スワップ契約に基づく支払。
資金調達との経済的関係が密接な場合、「利子に準ずるもの」に該当。
② 為替スワップによる通貨借換え取引
海外子会社向け融資を外貨建てで行う際、為替スワップを利用して円との交換差損が発生。
実質的に借入のコストに近い性質を持つため対象。
③ 転換社債型の資金調達(CB)に伴う割引費用
法的には社債の発行差金だが、利払いと同様の経済的効果を持つため該当可能性あり。
④ 金利連動デリバティブ(IRS+Loan)組成契約
借入契約と金利スワップを同時に組成し、実質的に固定金利を実現する取引。
セットで判断され、支払差額が利子相当とみなされる。
⑤ グループ内キャッシュプールにおける利息調整差額
資金を集中管理するグループ金融スキームで発生する調整金。
内部利率が実質的に借入金利を意味する場合は利子に準ずる。
⑥ 取引先保証金に対する調整支払
契約保証金に対して利息と同等の調整支払を行う場合、経済実質で判断。
⑦ ヘッジ目的の為替予約
資金調達と直接関係する為替予約取引で発生する支払差額。
借入コストと同質と認められれば該当。
⑧ リース契約における金利要素部分
ファイナンス・リースにおける金利相当部分は、既に法人税法上も「利子」と同視されており、対象。
⑨ LBOファイナンスにおけるPIK利息(支払繰延利息)
支払を繰り延べる代わりに元本へ加算される利息。経済実質上の支払利子とみなされる。
⑩ 外貨建債券の発行に伴うスプレッド支払
為替ヘッジ込みで発行する場合、為替差損と併せて利子相当部分を区分要。
★ポイント
金利計算要素があるだけでは不十分。
「資金調達との関係」が経済的に密接であるかを総合的に判断。
会計処理や勘定科目は補助要素であり、決定的ではない。
【№5】手順
過大支払利子税制の適用に際しては、以下の手順で整理するのが安全です。
① 支払内容の把握
まず、支払金の性質を確認します。スワップ・ヘッジなど、複数契約を横断的に確認。
② 資金調達との関連性を検証
対象となる支払が資金調達に密接に関連しているかを検討。
契約目的・資金の流れ・会計処理の整合性を確認します。
③ 経済的実質の判断
形式的な契約名ではなく、「実際に何のための支払か」で判断します。
資金調達を伴う取引であれば、原則「利子に準ずるもの」と整理します。
④ BEPS行動4報告書との整合確認
経済的実質に基づく判断を行い、法的形式に依存しないことを再確認。
日本の政令解釈もこれに基づいています。
⑤ 税務申告上の反映
対象となる支払を「対象純支払利子等」として計上し、調整所得金額の一定割合(通常20%)を超える部分を損金不算入とします。
⑥ 文書化(エビデンス)
契約書、取引明細、会計処理メモを保存。
特にスワップ・デリバティブ契約は、資金調達目的との関連を説明できる資料が必要です。
⑦ 税務調査対応
税務調査では「実質関係の証明」が重視されます。
取引単体でなく、一連の取引全体を整理した図解を添付するのが望ましいです。
【№6】FAQ(よくある質問)
① Q. 金利スワップの支払金は全て「利子に準ずるもの」になりますか?
A. いいえ。資金調達と経済的に関連している場合のみです。独立した投機取引などは対象外です。
② Q. グループ会社間の貸付に金利スワップを使う場合は?
A. 借入・スワップが連動して利率調整を行っているなら対象になります。
③ Q. 市中金利を参照している取引なら自動的に該当しますか?
A. いいえ。金利を参照していても資金調達と無関係なら対象外です。
④ Q. 「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」はどこまで広いですか?
A. 法的利息以外でも、実質的に借入コストを構成するすべての支払を含みます。
⑤ Q. 静岡市や浜松市に拠点を持つ中堅製造業で、為替ヘッジをしている場合は注意点は?
A. 為替予約やスワップの支払が実質的に借入と一体化しているなら対象になりえます。取引記録を詳細に残しましょう。
⑥ Q. 税務上の「純支払利子等」と会計上の「支払利息」は同じですか?
A. 異なります。税務では経済実質で判断し、会計科目は参考情報にすぎません。
⑦ Q. 税務調査で問題になりやすいのは?
A. 形式上スワップ契約にして利息を見えにくくしている場合です。経済的実質で再評価されます。
⑧ Q. 外貨借入のヘッジ契約をどう扱えばよいですか?
A. 借入目的であれば利子相当支払を含めます。投機目的の先物予約は対象外です。
⑨ Q. 通達66の5の2-5の調整差額も含まれますか?
A. はい。私法上の利子でなくても、経済的実質に基づき含めることが適当とされています。
⑩ Q. 実務的にどう整理すれば安全ですか?
A. 会計と税務を分けず、契約・目的・支払構造を一覧化することです。顧問税理士と早期に方針を統一しましょう。
【№7】まとめ
今回の照会文書で金融庁が明確にしたのは、過大支払利子税制における「支払利子等」の範囲を、
法的形式ではなく経済的実質によって判断すべきという原則です。
OECDのBEPS行動4報告書の方針を踏まえ、日本でも利子控除制限ルールが強化されています。
すなわち、「経済的に利息に相当する支払」があれば、それがスワップやヘッジなど
複雑な金融手段によるものであっても、税務上は利子とみなされうるということです。
これにより、企業は資金調達スキームの設計段階から、
「どの支払が実質的に利息と見なされるか」を意識した内部統制が必要になります。
特に、海外子会社への貸付やグループ内融資を行う法人では、
会計・税務・財務の連携を強化しなければ、想定外の損金不算入リスクが生じるおそれがあります。
また、今回の照会は「特定の事例解釈」ではなく、
税務当局の基本スタンスを示した方向性確認文書としての性格が強い点も重要です。
すなわち、「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」という抽象概念を、
単なる理論ではなく、BEPS対応を踏まえた実務判断基準として整理した形です。
中小企業や地方企業にとっては、直接的な国際税務問題に見えにくいテーマかもしれませんが、
静岡・浜松エリアのように製造業・輸出業が多い地域では、
為替スワップや海外向けL/C取引に関連する支払も無関係ではありません。
金融取引の多様化に伴い、経済的実質をもとにした税務判定は
今後ますます重要になるでしょう。
したがって、経理担当者や経営者は、次の3点を意識することが求められます。
① 「金利要素」よりも「資金調達目的」を重視して取引を整理すること。
② 会計処理上の勘定科目ではなく、実質で判断される点を理解しておくこと。
③ 税務調査対応のため、契約書・ヘッジ目的・資金フローを一体で説明できる資料を整備すること。
この3つを実践するだけでも、制度の誤解適用を防ぎ、調査時の説明リスクを減らせます。
制度の目的は租税回避の防止であり、真摯に事業を行う企業に不利益を与えるものではありません。
正しい理解と準備で、むしろ透明性の高い財務運営を示すチャンスにもなります。
【№8】出典
出典:『税務通信』第3861号(2025年7月28日)「金融庁 過大支払利子税制に関する照会文書を公表」
参考:国税庁タックスアンサー「過大支払利子税制の概要」(参照日:2025-07-28)
参考:e-Gov法令検索「租税特別措置法 第66条の5の2」「租税特別措置法施行令 第39条の13の2」
(参照日:2025-07-28)
【№9】該当条文の説明
① 租税特別措置法 第66条の5の2(過大支払利子税制)
法人が支払う純支払利子等の額が、その法人の調整所得金額の一定割合(通常20%)を超える場合、
その超過部分を当期の損金の額に算入できない旨を定めています。
② 租税特別措置法施行令 第39条の13の2
支払利子等の範囲を明示しており、「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」を含むと定めています。
これは法的な利息に限定せず、経済的実質として利子と同様の性質を持つ支払を対象とします。
③ 租税特別措置法通達 66の5の2−5
私法上の利子でない調整差額であっても、経済的実質に鑑み「利子に準ずるもの」として扱うことを明示。
今回の金融庁照会文書と同趣旨で整合しています。
④ 背景法令:BEPS行動4(OECD)
企業の過剰な利子控除を制限する国際基準。日本の過大支払利子税制の改正根拠となっています。
【№10】おわりに
最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、
静岡市、浜松市から全国の中小企業をサポートする最高のIT税理士法人に
お気軽にご相談くださいませ!
※当事務所はDXを経営に活かすことを推進しており、当ブログはAIを活用して生成しています。
実際の税制や政策、判例、事件、事象を元に作成していますが、
正確な内容や最新の情報とは異なる場合がありますことをご了承くださいませ。
無料相談をご希望の方は、最高のIT税理士法人へお気軽にお問い合わせくださいませ。
https://toc-tax.jp/contact/