フリーレント期間のある契約と法人税の新しい取扱い
2025年11月4日
【№1】はじめに
こんにちは!
静岡市、浜松市から全国へ向けて「IT×税務会計×補助金=経営革新」を発信して、「日本一わかりやすい税理士事務所」を目指す最高のIT税理士法人です!
私たちは「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念を元に、「最先端のIT技術を活用して中小企業の業務生産性を爆上げする最高の税理士法人」となるべく、日々精進しています!
本日は、「フリーレント期間のある契約と法人税の新しい取扱い」についてお伝えさせていただきます!
フリーレントとは、オフィスや店舗などの賃貸借契約において、契約開始から一定期間、賃料の支払いを免除する特約のことを指します。
「入居促進のためのインセンティブ」として不動産業界では一般的ですが、これまで税務上の明確な取扱いが示されておらず、
「無償期間中は損金計上できないのか?」「会計上の費用配分とずれてしまうのでは?」といった疑問が多く寄せられていました。
とくに静岡・浜松エリアでは、テナント型オフィスや商業施設の新設・移転が増え、
中小企業がフリーレント契約を結ぶ場面が年々増加しています。
たとえば浜松駅前の再開発ビルや静岡市の新オフィス棟では、3か月〜6か月のフリーレントが一般的です。
こうした取引が増える中で、会計処理と法人税処理の「ズレ」をどう扱うかは、実務上の大きな課題でした。
そこで令和7年度税制改正では、法人税基本通達12の5-3-2が新設され、
フリーレント期間を含む賃貸借契約に関する法人税上の処理が初めて明文化されました。
この改正により、課税上の弊害がない通常の契約であれば、賃料総額を賃借期間で按分して損金算入することが認められ、
会計と税務の整合性がとりやすくなりました。
今回は、この新通達の内容・適用範囲・実務でのポイントを、静岡・浜松の中小企業経営者の方にも分かりやすく解説いたします。
【№2】結論
★結論から言えば、令和7年4月1日以後に開始する事業年度からは、
「フリーレント期間(一定期間賃料を無料とする契約)」について、賃料総額を賃借期間で按分して損金算入する方法が法人税上も正式に認められることになりました。
国税庁は新たに「法人税基本通達12の5-3-2」を新設し、従来のように支払時点で損金処理する方法(現金主義的処理)だけでなく、
会計処理に合わせて発生主義的に費用を配分する方法も選択できるようにしました。
ただし、課税上の弊害があるケース(たとえば無償期間が極端に長い契約や、賃料割引が20%超の異常な取引)では適用されません。
また、損金算入には**損金経理(帳簿に費用として計上していること)**が必要条件です。
中小企業も、新リース会計基準の強制適用対象ではなくても、会計上同様の処理をしていればこの通達を利用できます。
つまり、静岡・浜松の企業が新規オフィスや店舗を賃借する際に「3か月間フリーレント」などの契約を結んだ場合、
支払時点での費用計上だけでなく、契約期間全体で費用を均等に配分する処理も税務上認められるようになった、というわけです。
【№3】やさしい解説
これまで、フリーレント契約(一定期間の無償賃貸)は、
「税務上どのように損金処理すべきか」が曖昧でした。
会計上は、契約全体の期間にわたって費用を均等配分(発生主義)することが一般的です。
しかし法人税の世界では、これまで「実際に支払った時点」で損金算入するのが原則でした。
そのため、会計上は費用が発生しているのに、税務上は損金と認められないというズレが生じていました。
たとえば、3か月間フリーレントで入居する契約を結んだ場合、
会計上は契約期間全体で費用を平準化して計上しますが、
税務では支払いがないため「最初の3か月は損金ゼロ」と扱われていたのです。
このズレが、決算書と税務申告書の乖離を生み、
税務調査の際にも「費用計上時期の誤り」と指摘されるケースが見られました。
今回の改正では、こうした不整合を是正し、
会計処理に準じた発生基準での損金計上を認める方向に制度が整備されました。
つまり、会計上・税務上の費用認識を一致させることで、
経営成績をより正確に反映できるようになったのです。
また、「課税上の弊害」とは、いわば不自然な契約を防ぐための歯止めです。
たとえば、
無償期間が長すぎる(4か月超かつ期間の半分以上が無償)
実質的な値引きに該当する(差額が総額の2割超)
といった場合には、今回の通達を適用できません。
このように、正当な取引実態を伴う契約であれば、
フリーレント期間中も均等に損金算入できるという点が最大のポイントです。
【№4】具体例
① 例1:新オフィス移転(浜松市)
5年契約・月額80万円・3か月フリーレント。
総額4,560万円を60か月で均等割し、月76万円を損金算入。
② 例2:ショッピングモール出店(静岡市)
10年契約・月120万円・6か月フリーレント。
1億3,680万円を120か月で均等配分(月114万円)。
③ 例3:短期フリーレント(静岡市清水区)
2年契約・月50万円・1か月フリーレント。
総額1,150万円を24か月で均等割(月47.9万円)。
④ 例4:課税上の弊害に該当(除外)
1年契約・月100万円・6か月無償。
半期間が無償であり、課税上の弊害に該当→適用不可。
⑤ 例5:会計未計上のケース
無償期間を費用に計上していない場合、旧来の支払時点処理が継続。
⑥ 例6:賃料改定あり(中途変更)
契約中に賃料が90万円→100万円へ上昇した場合、
改定後の総額で再按分が必要。
⑦ 例7:共益費のみ支払いあり
フリーレント期間中も共益費10万円を支払っている場合、
共益費部分は損金算入可、賃料は均等配分。
⑧ 例8:中小企業会計基準採用法人
リース会計基準の適用対象外でも、損金経理していれば新通達の適用可能。
⑨ 例9:貸主が関連会社の場合
親子会社間でのフリーレント契約でも、
適正な経済合理性があれば按分処理が認められる。
⑩ 例10:途中解約した場合
途中解約時は、解約日までの期間に応じて費用を再按分する。
過大計上分は戻入れ(益金算入)として処理。
【№5】手順
★重要
フリーレント契約を締結した場合、税務処理を正しく行うためには次の5つの手順が必要です。
① 契約内容の確認
まず、賃貸借契約書にフリーレント期間が明確に記載されているか確認します。
単なる「入居日から支払開始日までの猶予」ではなく、無償賃貸の合意が明示されていることが前提です。
② 賃料総額の算定
無償期間を除いた残りの支払総額を算定します。
これが「按分対象」となる金額で、契約書の賃料条項と照合する必要があります。
③ 按分計算
フリーレント期間を含めた全期間(月数)で総賃料を割り、1か月あたりの按分額を求めます。
たとえば総額4,560万円・期間60か月の場合、月額76万円が損金算入額です。
④ 会計処理
会計上も同額を費用認識し、損益計算書上の賃借料として処理します。
法人税法上の損金算入は「損金経理」が条件のため、仕訳計上を必ず行うことが必要です。
⑤ 税務申告への反映
法人税申告書では、別表四(所得の金額の計算に関する明細書)において、
支払基準と発生基準が異なる場合の調整が不要になります。
つまり、今後は税務調整を行わずに、会計ベースで完結させることが可能になります。
【№6】FAQ(よくある質問)
Q1. フリーレントが2か月未満でも適用されますか?
→ はい。期間の長短にかかわらず、契約に明示されていれば対象になります。
Q2. 無償期間が1年を超える場合はどうなりますか?
→ 課税上の弊害(法基通12の5-3-2【参考2】)に該当するため適用できません。
Q3. 契約更新時に再度フリーレントが設定された場合は?
→ 更新契約も独立した契約とみなされます。再度同様の按分計算が必要です。
Q4. 賃料改定が途中で発生した場合は?
→ 改定後の賃料総額で再計算します。旧賃料部分と新賃料部分を分けて按分してください。
Q5. 借主が個人事業主の場合もこの取扱いを使えますか?
→ いいえ。今回の通達は法人税基本通達です。個人は所得税上の実現主義に基づきます。
Q6. 損金経理をしていない場合は?
→ 会計上費用計上していないと損金算入はできません。支払時処理(旧方式)となります。
Q7. フリーレント期間に共益費を支払う場合は?
→ 共益費は通常の賃料と同様に費用処理できます。今回の通達の影響は受けません。
Q8. 静岡県内の不動産業者との契約でもこの通達を適用できますか?
→ はい。国内契約であれば地域を問わず適用されます。浜松・静岡市の企業も対象です。
Q9. 税務調査ではどの点を確認されますか?
→ 契約書にフリーレントの明記があるか、按分計算の合理性、損金経理の有無が確認されます。
Q10. 旧処理から新処理へ切り替える場合、届出は必要ですか?
→ いいえ。会計方針の変更に該当しませんが、社内会計基準書で明文化しておくと安心です。
【№7】まとめ
今回の通達改正は、フリーレント契約に関する長年の実務的な課題を解消する重要な一歩です。
これまでの税務処理は「支払時点で損金算入」という単純なルールでしたが、
実際の契約実態や会計処理との乖離が大きく、
企業にとっては決算書の整合性・税務リスクの両面で悩みの種でした。
新通達では、会計上の費用認識を尊重する姿勢が明確になり、
経済実態に即した柔軟な処理が可能になりました。
これは、国税庁が「形式から実質へ」舵を切った象徴的な改正ともいえます。
とくに中小企業では、経理担当者がフリーレント期間の処理を誤ると、
税務調査時に「損金過大」や「期間対応不備」を指摘されるリスクがありました。
今回の通達により、明確なルールが示されたことで、
安心して契約設計・会計処理を進めることができます。
さらに、静岡・浜松のように不動産需要が旺盛な地域では、
新築ビル・複合施設への入居を促すためにフリーレントが頻繁に設定されます。
そのため、今回の改正は地元企業の実務にも直結するテーマです。
★注意
制度の適用は令和7年4月1日以後開始事業年度からです。
今後の契約書作成・更新時には、
「無償期間の長さ」「賃料総額の割引率」「会計上の計上方針」を確認し、
事前に顧問税理士と相談することが不可欠です。
制度改正を正しく理解し、会計と税務を一致させることは、
経営の透明性向上にもつながります。
最高のIT税理士法人として、静岡・浜松の中小企業の皆様の経営判断を、
今後も全力でサポートしてまいります。
【№8】出典
出典:『税務通信』第3862号(2025年08月04日)「国税庁 フリーレントに係る借手の法人税の取扱いを新設」
参考:国税庁タックスアンサー「法人税の損金算入の時期」(参照日:2025-08-04)
参考:e-Gov法令検索「法人税基本通達12の5-3-2、法人税法第53条」(参照日:2025-08-04)
【№9】該当条文の説明
法人税法第53条(損金経理を要する金額)では、
「損金の額に算入するためには損金経理をしていること」が要件とされています。
つまり、単に経済的に費用が発生していても、帳簿に明確な仕訳処理(損金経理)がなければ、
税務上は費用として認められません。
今回の新設通達である法人税基本通達12の5-3-2は、
この原則を前提としつつ、フリーレント契約のように「支払いがない期間」にも費用を配分することを認めるものです。
これは、会計上の発生主義との整合性を保ち、課税の公平を図るためのものです。
また、この通達は、形式的に「無償期間がある」というだけでなく、
契約全体の経済実態を踏まえて判断する点に特徴があります。
たとえば、フリーレントが営業促進のために短期間設けられた合理的なものであれば、
課税上の弊害とはみなされません。
一方で、次のようなケースは注意が必要です。
① 無償期間による値引き幅が賃料総額の2割を超える場合。
② 無償期間が4か月を超え、期間の過半が賃料なしとなる場合。
このような場合には「実質的な値引き」とされ、
損金算入の按分処理は認められません。
今回の通達は、単なるテクニカルな改正ではなく、
法人税法上の期間損益対応の考え方をより実務的に明確化したという点で意義があります。
今後、フリーレント契約を結ぶ企業は、
契約書の内容を税務・会計の両面から検証し、損金経理の裏付けを確実に残すことが求められます。
【№10】おわりに
最後に、コラムの内容の詳細や、企業、個人の状況に応じたお悩みについては、
静岡市、浜松市から全国の中小企業をサポートする最高のIT税理士法人にお気軽にご相談くださいませ!
※当事務所はDXを経営に活かすことを推進しており、当ブログはAIを活用して生成しています。
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